北海道でカメラマン歴43年のプロが伝授する
北海道・網走市(あばしり)生まれで子供の頃から写真が好きで、
母にねだって買ってもらったオモチャの500円のカメラ。
おもちゃと言っても、小さなフィルムを入れて、
ちゃんと撮影もできたんですよ。
そのカメラで、網走橋の上から撮った
網走港の写真が私の最初の作品でした。
東京写真専門学院を卒業後、札幌の商業写真スタジオに入社。
カメラアシスタントと暗室でのプリントを経験しながら、
撮影技術を身につけました。
その後、カメラマンとして撮影に携わり、
4年半勤務したあとフリーカメラマンとして独立しました。
プロカメラマン歴43年になります。
- 広告写真撮影全般-
- パンフレット
- ポスター
- チラシ用の商品写真
- 料理写真
- モデル撮影
- 店舗店内写真
- マンション戸建てなどの不動産関係
- 雑誌の取材撮影
- 旅行パンフ
- 風景写真
- イメージ撮影
- ホームページ用写真 などを手がけて来ました。
プロカメラマンと並行して平成6年から16年間、
北海道芸術デザイン専門学校で写真科の非常勤講師を務めました。
授業は写真芸術、撮影技術、暗室テクニックを担当しました。
講師を経験して自分の知識や技術を分かりやすく教えることが、
いかに難しいかを痛感しました。
そして、教えることの楽しさ大切さも学びました。
この講師の仕事は私の人生にとって非常に貴重な経験でした。
【人生を豊かにする写真術】
写真はある意味、その人の人生そのものです。
どんな所へ行き、どんな人と出会って、何を感じたか。。
それを記録したものが写真です。
私が生まれてどんな子供時代を過ごして来たのか。。
それを写真で記録してくれたのが母でした。
父と母が結婚したとき、当時は高価だったカメラを
親戚からプレゼントされました。
現在みたいに気楽に撮れるようなカメラではありません。
縦型の二眼レフで大きくて、フィルムも35mmではなく
6×6判というサイズで正方形でした。
母が使っていたそのカメラは今でも私の宝物です。
写真の役割は記録?記録写真ではない?
私は写真は記録だと思ってます。写真の一番の役割です。
記録写真とは違います。
写真で自分の感じたこと、
体験したこと、思い出を記録するのです。
昭和の初期、土門拳という写真家がいました。
日本初の報道カメラマンと言われています。
九州の筑豊炭田の街で生きる子供達を撮った
『筑豊のこどもたち』という写真集が有名です。
後年は『古寺巡礼』で仏像を撮ってました。
そんな時のエピソードです。
一日の撮影が終わり、フィルムも使い切り帰ろうとした時、
五重塔の姿が美しかったのでどうしても撮りたかったのですが、
仏像の撮影で使い切ってたのでフィルムはありません。
それでも土門拳はカメラを構え、シャッターを切ったそうです。
フラッシュを何回も焚いて・・記憶に残すために。。。
【カメラのメカニズム】
プロ、アマに限らず、写真を撮ろうと思ったら
カメラ機材は欠かせません。
銀塩時代はカメラボディ、レンズ、フィルムが重要な要素でした。
良い写真を撮るために重要な順番を付けるなら、
撮影の目的にもよりますが。
一般的に言うなら、レンズ、フィルム、カメラボディの順でしょうか。
同じフィルムを使った場合、レンズが良ければカメラ本体の性能に関係なく、
一般的な写真のクオリティは上がります。芸術的なセンスは別として。
デジタル化した現在、フィルムの要素は無くなりました。
フィルムの代わりになるのが記録メディア(CF.SDカード)、撮像素子、映像エンジンなどです。
いくら良いレンズを使っても撮像素子、映像エンジンの性能が悪ければクオリティは上がりません。記録メディア以外はカメラ本体に組み込まれているので、レンズの性能しかりですが、
銀塩時代よりボディ選びの比重が大きくなっています。
性能のいいカメラ性能のいいレンズを使うと良い写真が撮れるのか?
それは違います。
同じくらいの腕(写真のセンス、感性)を持ったカメラマン同士だと、
性能のいいカメラを持ってる方が遥かに有利でしょう。
仮に性能のいいカメラを持った腕の悪いカメラマンと
性能の良くないカメラを持った腕の良いカメラマンでは、
どっちがいい写真を撮れると思いますか?
画質など写真の物理的なクオリティだけを考えると、
当然性能のいいカメラの方が有利ですが、
センスのクオリティで見た場合、良い写真を撮るのはカメラマンです。
【構図】写真を構成する!
構図は勉強するな!と私は言いたい。。
写真を勉強するにあたって、大事なのが構図です。
構図には代表的なものでは3分割構図、日の丸構図、対角線構図などあります。
なのに、構図を勉強するな!とは?
一般的に、センス(感性)のいい人は良い写真が撮れます。
じゃあ、センスの悪い人は下手な写真しか撮れないのか?
そうですね、そのままではきっとそうでしょう。
でも、センスは学習で身につける事が出来ます。
生まれ育って来て、なにがしかのセンスは身につけて来てるはずです。
例えば洋服センスなんかは一番わかるのではないでしょうか。
ファッション雑誌やテレビ、
洋服店などで自然と他の人の服を見て学習してると思います。
それと同じで写真も他人の作品を沢山みたり、
自分で沢山撮ることでセンスが磨かれます。
そうです、センスは磨くものなんですね。
ですから、先に構図を勉強するとその構図に縛られて、
作品がつまらなくなります。
まずは自分のセンスを試すと言う意味合いも含めて、
自由に写真を楽しんでみましょう。
写真を撮るときはまず、主題をはっきりさせます。
主人公のいない小説はとりとめがなくて、つまらないものです。
写真も同じでまず撮りたいもの、主題を決める事が大事です。
【フレーミング】=空間を切り取る
写真とは空間を切り取る作業です。
切り取るとはフレームの中から無駄なものを省く作業のことです。
それをフレーミングと言います。
四角い画面の中に主題をどう収めるかを常に意識しましょう。
もちろん、ピントは主題に合わせましょう。
【レンズの特性】レンズの種類
最近のレンズはズームが主流ですが、大まかに分けて3種類のレンズがあります。
-
- 1.標準レンズ(スタンダード)
- 2.広角レンズ(ワイド)
- 3.望遠レンズ(テレ)
レンズの特性を知ることはこれから
写真を撮るにあたって、とても大事な要素です。
カメラを構えた位置で、
もっと沢山景色を入れたいから広角にしよう!
撮りたいものが遠くにあるから望遠にしよう!
こんな基準だけでレンズを選んでませんか?

サンプル画像1)はそれぞれ、どのレンズで撮影されてるか分かりますか?
使われてるレンズの種類と、その理由を考えてみて下さい。
では、各レンズの特性です。
1.標準レンズ
- 人間の眼に一番近い感じで写ります。
- 写ってる物の距離感がごく自然です。
- 見た目に近い遠近感で、歪みが少ない。
2.広角レンズ
- より広い画角(写真に写る範囲)で写せます。
- 近くの物を大きく、遠くにある物を小さく写します。
- 遠近感が強調される。
- 画面の歪みが出やすい。
- ピントの合う範囲が広い。(被写界深度が深い)
3.望遠レンズ
- 遠くの物を大きく写せる。
- 主役の被写体と背景の距離感がなくなる。
- 見ている風景を部分的に切り取ることが出来る。
- ピントの合う範囲が狭い。(被写界深度が浅い)
- カメラのブレが顕著になる。
サンプル画像1)の答えは
上段左から望遠、超望遠、標準、
下段左から広角、望遠、望遠です。
レンズのパースペクティブ=遠近感
◉広角レンズでは、近くのものは大きく
遠くのものはより小さく写ります。
◉望遠レンズでは、被写体と背景の距離感が圧縮されて、
遠くの背景が近くに写ります。
◉標準レンズは、被写体と背景が人間の見た目に近く、
自然な距離感で写ります。
サンプル画像2)です。

主役の被写体は大体ですが同じ大きさに写してます。
画像は4枚ありますが、何が違うか分かりますか?
レンズの種類を推測して、その理由も考えてみて下さい。
◉ヒント
写真の背景に注目してみてください。
サンプル画像(2. の解説
- ・左上は広角レンズ24mm 背景が小さく写ってます。
- ・右上は標準レンズ50mm 背景が少し大きくなってます。
- ・左下は望遠レンズ85mm 背景との距離感が縮んできました。
- ・右下は望遠レンズ120mm 距離感がもっと縮まりました。
では、次のサンプル画像(3.は何が違うのでしょうか?

左上24mm (広角) 右上35mm (広角)
左下50mm (標準) 右下120mm(望遠)
写真は全て同じ位置から撮影。
- ・広角レンズは橋の長さが強調されて奥行きがあります。
- ・標準レンズは見た目と同じ感じで自然な距離感です。
- ・望遠レンズは背景を引きつけ、距離感が縮まってます。
【シャッタースピードと絞りの関係】
基本で大事なことです。
まず、シャッタースピード。。
シャッタースピードとは?
デジタル化になって、シャッタースピードの選択範囲も広がりました。
どういうことかと言うと、
以前は1/30秒の次に速いのは1/60秒で
1/60秒の次に速いのは1/125秒という具合に、
正確ではないですが倍々になってました。
しかし現在は1/2単位で表示することも可能です。(カメラの機能で違います)
どういうことかと言うと、
例えば1/2単位だと1/30秒の次に速いのは1/45秒で、
次が1/60秒、1/90秒、1/125秒となります。
でも、基本は変わりません。
1単位で表示すると
1秒 1/2秒 1/4秒 1/8秒 1/15秒 1/30秒 1/60秒 1/125秒 1/250秒
1/500秒 1/1000秒 1/2000秒 1/4000秒 1/8000秒
という具合です。2倍、もしくは1/2倍で1単位と考えます。
1/30は1/60の1/2倍(半分)のスピードで、1/60は1/30の2倍のスピードと考えます。
【レンズの絞り】とは?
絞りと言うのはレンズを人間の眼に例えると、瞳(虹彩)です。
明るい所では瞳が小さくなり、暗い所では瞳が大きくなります。
人間の眼は明るい所では光が多いので、瞳を小さくして光の量を抑えます。
暗い所では光が少ないので大きくしてなるべく明るく見えるようにします。
その機能が絞りなのです。
まさに虹彩と同じで、絞りの大きさを変えて光の量を調節します。
絞りは『F』または『f』で表します。
F値と言い、次のような数字で表します。
f1.4 f2 f2.8 f4 f5.6 f8 f11 f16 f22 f32
分かりやすくシャッタースピードと同じように、1段階表示にしましたが、
実際には1/2段階や1/3・1/4段階表示になってます。
レンズの項目で出て来ましたが、
絞りは被写界深度ということに大きく関係して来ます。
シャッタースピードと絞りの関係は、
少しややこしいのでなるべく簡単に説明します。
適正露出が例えばシャッタースピード1/30秒で絞りがf8の時、
1/60秒ではf5.6、1/15秒ではf11で同等の明るさになります。
(例)
1/4 1/8 1/15 1/30 1/60 1/125 1/250
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
f22 f16 f11 f8 f5.6 f4 f2.8
◉この関係は相反則と言います。
相反則とは、シャッタースピードを一段階早く(光量少)すると
絞りは一段開く(光量多)と同じ光量を得られる事です。
(相反する法則ということですね)
つまりシャッタースピードを1/30秒より速い1/250秒にした時、
絞りはf2.8、1/8秒に遅くした時はf16で同じ明るさを得られます。
これは何に役立つかと言うと、
スポーツなどシャッタースピードを速くしたい時は
Tvモード(シャッタースピード優先)、
背景や手前をボカしたい時は
Avモード(絞り優先)を使う場合に役立つのです。
ただし、マニュアルにしない限り露出はカメラが自動的に決めるので、
知識として憶えておくといいでしょう。
【被写界深度】
では、ここで被写界深度について説明しましょう。
その前に憶えておいて欲しいことがあります。
それは、ピントはカメラと水平方向の1点にしか合わないと言うことです。
その1点に合ったピントの前後にある一定の範囲で
ピントを合わせることが出来るのです。
その範囲のことを被写界深度と言います。

どこが違うかは一目瞭然だと思います。
- これは絞りの違いによる背景のボケ具合の変化です。
- 一番上は背景があまりボケておらず、
主題の桜が背景にとの区別がつきにくくなってます。 - 真ん中は背景が少しボケて区別がつくようになりました。
- 下は背景が完全にボケて、主題の桜がくっきりと浮き上がって見えます。

上の2枚と下の2枚は焦点距離の違いによる被写界深度の違いを表現してます。
ピントは全て同じ真ん中のタンポポに合わせてます。
焦点距離は上は200mmで下が100mmです。
絞りは左が f4で右が f22です。
真ん中のタンポポを境に写真の奥と手前にピントが合っている範囲が確認出来ると思います。
しかも、焦点距離が短い100mmの方が、その範囲が広いのが分かるでしょうか。
そうです、被写界深度は焦点距離が長い程(望遠になるほど)浅く、
焦点距離が短くなる程(広角になるほど)深くなる特性があるのです。
ですから、広角レンズで撮影した写真はピントが全体に合ってるように見えます。
逆に望遠レンズで撮る時はしっかりピントを合わせないと、ピンボケになりやすいのです。
【まとめ】★大切なマナーのこと
写真を憶えて少し上手になってくると、
他人と違うアングルやもっと良く写る場所を確保したくなるものです。
そして、そのアングルや場所を確保するために立ち入り禁止の場所に
入ったり、危険な場所で撮影してる人を見かけます。
ひどい人になると、木が邪魔だからといって枝を折ったり、
あまつさえ木を切ってしまう人さえいます。
そうまでして撮った写真が、どんなに傑作でも本当に良い写真でしょうか?
私は撮影以前の問題だと思います。
他人を大事に思い、すべてのものに感謝の気持ちを忘れない事です。
これは写真に限らず、社会で生きていく上での大事なことだと思います。
与えられた条件下で良い写真をいかに撮るか?
それもカメラマンの腕なのです。